冬から春へ

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実はこの会は、個人的に祥子を誘えない健太が、自分のために企画したものではあるのだが、多くはそれに気付かず楽しんでいる。 気付いているのは慎太郎、佐々木、若菜、青木…あたりだが、イベントとして十分に楽しめるので特に文句はない。 普段のパート練習の時間は、途中からおしゃべりの会になったりお茶会になったりすることも実は多いのだが、それを全パート集まってすることはない。あってもバイオリンビオラ合同とか、金管打合同とか、それくらいのサイズまでだ。 全員が音楽室に集まるときは、真面目な合奏。 初めての企画だが、2年生も合流して音楽室をクリスマスカラーに装飾している。 結局ほぼ全員参加となったので、まずは各パートから一曲ずつ、クリスマスソングを発表。 そのあとは有志で順番に、自由に演奏してよいことになっている。 一応、管弦楽部らしさも求めているようだ。白石を中心に、どんどん企画が煮詰められていく。 健太がうまく仕切るので周りが目立たないが、今年の一年は各所でよく動く。 「速水君、投票用紙と箱は作ってあるんだけど、賞品って出るのかな?」 書記や会計のメンバーが、健太を中心に集まって休み時間に準備をしていると、そこへ音楽準備室に向かう顧問がふらりと寄ってきた。 「速水、頑張ってるな。これやるよ」 顧問の小田先生は、40前くらいのおじさん先生だが、大学時代は声楽の専攻だったとかで、オケの技術指導をすることはない。ただ、施設管理や学校楽器に管理については顧問の許可がないと活動できないので、執行部にはなじみの深い先生だ。
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