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「 君は何をしているんだ? 」
それは僕がはじめておじさんに会った時に初めてかけられた言葉だった。
僕はその言葉に人生で初めての優しさを感じた。白いスーツに黒い長ズボンを履いていて、きれいな白いひげがスラム街を吹き抜ける風で震えていた。
親もいない、金もない、捨てられた子供。それが僕だった。服はボロボロで、そのころ僕は小さな段ボールの中に住んでいた。お金もないから食糧なんて
買えない。だから生きるためには盗むしかない。おじいちゃんやおばあちゃんがやっている店ばかりを狙って、その日の分の食料を毎日盗んでいた。夜になると夢を見る。それはどれもこれも悪夢ばかりだ。
”ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい。”
その日やった盗みのことで罪悪感が毎晩僕を襲う、
寝返りすら打てない段ボールの中で。
そんな毎日が続いていた中、僕は救われた。そのおじさんに。
その人は朝、気づくと僕の前に立っていて、
「 大丈夫かい? 」
そんな優しい言葉をおじさんはかけてくれた。でも、優しい言葉だからこそ僕は罪悪感で倒れそうになる。
「 心の中の言葉を吐き出してごらん。楽になるから。 」
僕は何を待っていたのかはわからないが、その言葉を聞いたとき、僕は膝を地面について、赤ん坊のように泣いた。
「 ごめんなさい。盗んでごめんなさい、食べてしまってごめんなさい、謝れなくてごめんなさい。。。悪い子でごめんなさい。 」
そう泣き叫んだ。おじさんは何を感じただろうか、引いただろうか、怒っただろうか?否、おじさんはただこう言った。
「 君は確かに悪い子だ、盗んで、食べて、謝りにもいってない。でもね、君の心にはまだ光がある。光があるから悪いことだと認識できるんだ。その光が、炎が、その心がこれから先も変わらなかったら、君はいい奴になれるよ。 」
おじさんの笑顔はまぶしかった。
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