正直になる薬

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 K博士は自分が嘘つきだと自覚していた。しかし、それは自分に厳しいからそう自覚するのであって彼の嘘の大半は人への思いやりから生じるのであるから世間一般の質の悪い嘘、取りも直さず綺麗事や作り事や調子のいい事やお世辞やお愛想やお体裁といった口先だけの心にもない事を言う人間に比べれば、誠実だった。それなのにいつも奥歯に物が挟まったようなものの言い方をするはっきりしない人だわと妻に思われ、正直になってと四六時中、言われていたK博士は、自分が正直になる薬の発明に日夜、取り組んでいた。
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