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ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件を語る前に
俺は、ロボ埼さんに捨てられたかもしれない。
俺は自宅の学習机で頭を抱えていた。
12月24日。世の中はクリスマス一色だった。
街では、至る所にツリーが飾られ、トナカイが飛び交い、サンタが右往左往していた。
元はキリストの生誕祭らしいけど、日本ではてケーキとチキンを食う祭りに過ぎない。
そんなクリスマス。
実は、日本ではケーキを食う以外にもやることがある。
正確には、クリスマスイブ。
恋人同士で過ごして、愛を確かめ合うことだ。
俺も12月24日、つまり、今日。
恋人であるロボ埼さんとデートしていた。
とはいっても、俺もロボ埼さんも中学生だ。
街をぶらついて、昼飯を食って、プレゼント交換をして6時前には解散した。
そして、現在の時間は午後10時。
俺は、自室の学習机にかれこれ1時間ほど突っ伏している。
家に帰って、風呂に入って、晩飯を食って、ロボ埼さんにラインをして、そこからずっと学習机に突っ伏している。
ここで簡単に俺の恋人であるロボ埼さんについて説明しておこう。
ロボ埼さんは、俺の恋人である。かわいい。
頭からプロペラが生えてきて空を飛べる。
「トランザム」とつぶやくとなにやら赤く発光し、動きが素早くなる。
右の耳から新しい電池を入れると、左の耳から使用済みの電池が出てくる。
隠すつもりはあるのかないのか。
端的に言うと、ロボ埼さんはロボットである。
ただし、遠隔操作式のロボットであり、実は中の人がいる。
とある事情で、俺は、その中の人がおっさんであると確信しているのだが。
詳しくは「ロボ埼さんの秘密」を見てほしい。
「ロボ埼さんの秘密」で遭遇したシュレリンガーのロボ埼さん事件は、俺にとって大きな決断を迫る事件だった。
が、それは置いておいて、ロボ埼さんについてまとめるとこうなる。
1.俺の恋人
2.ロボット
3.中身はおっさん
以上を踏まえて、今日俺に起こったことについて分析していこう。
今日のクリスマスデートは途中まで完璧だった。
待ち合わせ場所に現れたロボ埼さんの白いコートと赤いスカートは最高にジングルベルだった。
街中を散策している時も、特に問題はなかった。
ロボ埼さんとのデートでは、いくつか気を付けなければならないことがある。
1.電波の悪いところへは行かない(遠隔操作のため)
2.エレベーターなど重量制限のある場所は避ける(ロボなので、体重がトン単位)
3.食事は持ち帰りOKの場所(ロボ埼さんは物を食べられないので、中の人の所に持ち帰って食べる)
これらのことに気を付けつつ、俺は、携帯の電波を気にする乙女な力士に接するようにして、ロボ埼さんを華麗にエスコートした。
前日に相撲部屋の力士に頼んで、予行演習をした甲斐があった。
途中までは本当に完璧だったのだ。
だから、問題は最後だ。
俺が失敗したのは、二つのうちのどちらか。
そして、その失敗が今回の「ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件」を引き起こしたのである。
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