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ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件についての考察
原因が、1の経済力に対する不安なら、問題はない。
俺の経済力が問題だというのなら、これからの将来性を示すことでロボ埼さんの心配を払しょくすることができる。
なんなら、バイトを始めてもいい。
ロボ埼さんが心配にならない高価な指輪だって買って見せる。
中学生でも起業はできるロボ埼さんを安心させるだけの成果を上げる覚悟がある。
問題は、原因が2の口づけ失敗において、キスに至るまでに何か原因があった場合だ。
原因はいろいろと考えられる「俺の口が臭かった」「実はただの誤作動バズーカ」「空白の3分間に大量の人がなだれ込んでいた」
けれど、ひとつ。
俺には、これじゃないかという原因がある。
もしそれが、原因だったらと思うと、俺は自分自身が情けなくて、ずっと頭を抱えているのだ。
その原因がなにかというと「ロボ埼さんにキスをしようとした」ことだ。
つまり、中のロボ埼さんを遠隔操作しているおっさんが。
「こいつも結局は、女の外見目当てか」
そう俺のことを判断し、見限ったのではないかと言う可能性だ。
女の子型ロボットを操縦しておきながら、と思うかもしれないが、そこはおっさんの複雑な乙女心だ。
きっと、俺に「この唇はおっさんのものだよ」と言ってほしかったのだ。
そして、情けないことに俺は、ちょっと思ってたのだ。
「せめて、ファーストキスくらいは女の子としたい」
いざとなれば、おっさんにケツを晒す覚悟は決めている。
クラスの女子にそういう漫画も借りて勉強もしている。
どんなおっさんがロボ埼さんからはみ出ても大丈夫なように、部屋には梅宮辰夫や高田純次、地井武男などさまざまなおっさんの写真が貼られている。
部屋を掃除にしにきた母親がドン引きするほど貼られている。
でも、やっぱり、という、女の子に対する未練。
そこをロボ埼さんは見抜いたのではないだろうか。
もし、そうならば、俺は、ロボ埼さんを、いや、おっさんをひどく傷つけたことになる。
彼氏として最低だ。
俺には、覚悟が足りていなかった。
もしもやり直せるなら、俺はきっと迷わない。
そう俺が決意した時、スマホに着信がきた。
相手はロボ埼さん。
窓の外を見る。
玄関前に、携帯を耳にあてた男性が立っているのが見えた。
俺の心に、迷いはなかった。
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