ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件の裏側

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ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件の裏側

クリスマスイブが終わりを告げた。 現在の時刻は12月25日午前0時。 真っ白な壁に囲まれた地下室に、二人の女の子がいた。 一人は、壁にもたれてスリープモードのロボ埼。 もう一人は、ロボ埼を操作していた女の子。 空調の利いた地下室で、女の子は手元を見て、ため息をつく。 その指先にあるのは、今日、彼からもらった指輪だ。 長い入院生活で、成長の遅い小柄な女の子には大きすぎる指輪。 ロボ埼の指にぴったりと合う指輪。 もらった瞬間は、飛び上がるほどうれしかった。 心臓の動悸で、ロボ埼の操作もおぼつかなくて、また病院に戻るんじゃないかと思ったくらいだ。 けれど、彼とキスしそうになった瞬間。 女の子は思ったのだ。 彼が好きなのは、ロボ埼ではないか。 そう思った時、女の子の頭の熱は一気に冷めた。 気付けば、ロボ埼バズーカのコマンドを入力し、バックステップからの竜巻旋風脚をキャンセルしてステスラを用いた猫耳猫式「神速キャンセル移動」で逃げ出していた(動きがカサカサしてる) そして、今に至る。 女の子は、長い闘病生活をこの春に終えた。 その後自宅療養を挟み冬休み明けに、復学する予定である。 これまではロボ埼を操作することで、学校に通っていた。 学校のことも、クラスのこともよく知っている。 不安なんてないはずだった。 指輪を薬指にはめてみる。 ぶかぶかで、女の子の指からはどうやっても零れ落ちてしまう。 シンデレラを思い出す。 ガラスの靴ががあわなければ、王子はシンデレラを見つけることはできなかった。 そもそも、シンデレラを見た時、王子は本当に喜んだのだろうか。 薄汚れた、下女のような灰かぶりの足にガラスの靴がぴったりはまった時、王子はこう思ったのではないだろうか。 「うわ、やっちまった」 彼に「自分がロボ埼だ」というのが怖い。 彼に「ロボ埼じゃない」と言われるのが怖い。 彼に「君がロボ埼なの」と失望されるのが怖い。 空調の利いたあたたかな研究室で、女の子は身を震わせる。 スリープモードのロボ埼は、その様子をただただ眺めるだけだった。
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