ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件の結末

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ロボ埼さんキス拒否バズーカ事件の結末

研究室の扉が開く。 そこにいたのは一人の男の子だった。 「なんで」 「君のお父さんに連れてこられた」 なんだか、赤いような青いような微妙な顔色をした彼が、難しい顔で女の子を見る。 そして、壁に立てかけられたロボ埼を見て、少しほほ笑んだ。 そのほほえみが、女の子の胸をえぐる。 幾度となく、ロボ埼のカメラ越しに見た優しいほほえみ。 女の子が好きになった笑い顔だった。 「あの、その……」 「で、君がロボ埼さんの中の人」 声が出ない。 けど、否定もできなくて、女の子は首だけを恐る恐る動かす。 体中の血管が氷になったみたいに、体が動かない。 そんな女の子を前に、男の子は「本当に女の子だった……」となにやら感極まっている。 彼の中には長い間おっさんを愛せるかという葛藤があったのだけど、そのことを女の子は当然知らない。 「シュレリンガーのロボ埼さん事件」など、女の子には忘却の彼方である。 こほん。と仕切り直すように男の子が咳払い。 「大体の事情は、ここに来るまでに、君のお父さんから聞いた。  このままじゃ、不登校になるからっていうことで連れてこられたんだけど」 男の子が、女の子の手の中の指輪を見た。 女の子は、指輪を隠すように握りしめる。 「正直、急に君がロボ埼さんだって言われても、実感はわかないんだ」 「うん」 「だから、まずは、ロボ埼さんとの関係はリセットして」 「うん」 「君と友達になることから始めようと思うんだ」 「……うん」 女の子の中で「やっぱり」という言葉が浮かぶ。 「お前は恋人ではない」「今までだましてたな」そう言われた気分だった。 ロボ埼の中の人がこんな女の子で、さぞ失望しだろう。 そのことで彼を傷つけたなら、女の子はどんな償いでもするつもりだった。 「それで、お願いがあるんだけど」 「うん」 「君の左手、薬指、あけておいてくれるかな」 「……あける?」 男の子がほほ笑んでいた。 照れくさそうに、ロボ埼のカメラ越しに何度も見た。 恋人へと向けるほほえみ。 「友達になって、前に告白してくれたのは、ロボ埼さんだったから。  今度は僕の方から君に告白する。  君の指に合わせた指輪と一緒に、君に、恋人になってほしいって」 放心した女の子の目元から、涙がこぼれる。 男の子は、そっと女の子を抱きしめる。 「ごめん」 胸元で涙をこぼす女の子を、抱きしめたまま、男の子はロボ埼さんを見た。 スリープ状態で動けないはずのロボ埼さんが「おしあわせに」 そう言った気がした。
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