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(なのに、俺だけいつも独り……)
和美は川の横にある小さな池の前に立ち、水面に映った自分の姿を見た。
どう見ても、美少年の勇貴には不釣り合いな風貌の男がそこにいた。
彼は足元の石を乱暴に掴んで、水面に投げつけた。
神様って不公平だ。
やり場のない感情が胸にもやもやと広がる。いっそ、川に身を投げてやろうか。
その時……
曇りのない暗い空に流れ星が瞬いた。
◇◆◇◆
「イブイブでもいい!彼と過ごさせて下さい!一度でいいから優しくエスコートしてもらいたい……」
和美はとっさに叫んでいた。川原をジョギングしていたおじさんがギョッと視線を向けてきた。
恥ずかしくなってうつむく和美。
(馬鹿みたい……)
今日はもう帰ろうと思った。川に飛び込むのはいつでもできる。
◇◆◇◆
受け取ってもらえないと分かっているマフラーを編み始めて早や2か月。ようやく完成した。
朝、学校に向かいながら、和美はマフラーの入った紙袋をちらりと見て微笑んだ。
黒と白のチェックのマフラー。これを身に付けた勇貴はさぞ可愛いだろうな、なんて想像して和美はボーっとした。
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