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それで、うっかり人にぶつかってしまった。
いつもなら相手がひっくり返って怪我をするのだが、今日は違った――
◇◆◇◆
「大丈夫か……」
声が聞こえる。
ゆっくりと瞼を開くと、木の枝と空……どうやら、公園のベンチに寝かされているようだ。
和美と同じ高校の制服を着た少年の姿が目に映った。涼しげな目元に見覚えがあった。
(ひーちゃん……)
勇貴の親友・一ノ瀬聖(イチノセ・ヒジリ)だ。言葉にしたつもりが声がかすれて出ない。
その時、もうひとりの人影が近付いてきた。勇貴だ。
和美は慌てて身を起こした。
「気が付いた?……これ、あったかいお茶」
「う……うん」
和美は少々面食らっていた。何だか勇貴がいつもより優しい気がする。
「こいつがキミにぶつかって……ごめんね、どこも痛くない?」
勇貴が聖のほうに視線を投げてから言った。こくんと頷く和美。
「悪い。痛かったろ。けど、ぶつかったくらいで、女の子って弱いんだな」
気まずそうに頭を掻く聖。
「何言ってんだ、聖。当たり前だろ」
勇貴が非難した目で聖を見ながら、和美の頭を撫でる。
(えっ)
有り得ない。
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