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「か、鏡」
和美がそう言うと、勇貴はニッコリ微笑んで小さな鏡を和美に手渡してくれた。
「大丈夫、可愛い顔は無傷だよ」
(えぇ~っ!!?)
そこには確かに、色白で目の大きい可憐な美少女が映っていた。
◇◆◇◆
和美は信じられない思いで鏡を見つめていたが、やがて頭が冷えてくると、まともな考えを弾き出した。
(これは夢だ……)
「今から学校行っても完全に遅刻だな。……サボっちゃおうか」
勇貴が笑顔を向けてきた。ぎこちなく頷く和美。長い黒髪がサラッと靡いた。
(いくら夢だとはいえ、俺が美少女になった途端にそんな笑顔向けるなんて……)
罪な人だと思った。
いつもの和美には引きつった作り笑いしか見せてくれない。
(やっぱり可愛い子が過ぎなんだ)
嫉妬心が湧き上がってくる。でも、すぐに、自分自身にヤキモチを焼いてどーすんだ……と気付き、笑ってしまった。
「何笑ってるの」
「うふ、何でもない」
こうなったらとことん美少女になりきることにした。こんなチャンス、滅多にない!
「じゃ、どっか行こうか」
2人きりのデートとはいかないが、勇貴と遊びに行ける。和美は嬉しさに内心涙ぐんだ。
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