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どうせこの川に身を投じるなら、今がいいと思った。彼の目の前で。
そうすれば、彼は決して自分を忘れることはないだろう。
和美は川に飛び込んだ。
◇◆◇◆
「寒くない?」
優しく勇貴が微笑む。
結局、飛び込んだはいいが、場所が悪かった。浅過ぎたのだ。
「ごめんね、勇貴さん」
すぐに助けに来てくれた勇貴。靴や制服がびしょ濡れになるのもお構いなしに……
そして、近くにある勇貴の家に来て、服を借り、髪を乾かして……現在に至る。
「気にしなくていいよ。でも、死ぬなんて考えちゃ駄目だ」
「……」
「キミは可愛い。何も悲観することなんかないよ」
勇貴が頭を撫でてくれる。和美はポロポロとこぼれる涙を止められなかった。
今の姿は、仮の姿──
いつもの和美には、こんな言葉、絶対に掛けてくれないだろう。
勇貴の胸にすがりつくと、彼はそれに応えてギュッと抱き締めてくれた。
和美はしゃくり上げながら言った。
「勇貴さん……彼女いるの?」
「……いるよ」
「その人を愛しているの?」
「うん……」
和美は顔を上げた。ゆっくりと勇貴の顔に近付き、唇を重ねた。勇貴は全く抵抗しない。
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