第1章  ring

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私とソラスは"取り替え子"である。 産まれて間もなく、人ならざる者達ー"隣人"によって彼らの子どもと取り替えられ、人の世に残された。 私とソラスは長らくこの世界で暮らしていたが、数年前に"かの国"へ還っていった。 そこは"隣人"達の楽園であった。 出会う者は皆親切で、竜の姿で突如として現れた私とエルフのソラスにも、"対価"さえ与えればそれと引き換えに住む所や水や食べ物が採れる場所も教えてもらえた。そして人化の仕方も。 "かの国"の入り口の光を浴び竜の姿になったが、竜は強い生命力と魔力を持つ生き物で、本来の力を取り戻した私は人の姿をとることも可能になっていった。 生活が軌道に乗り、自分の姿を安定させる事ができるようになった為、私は一度人間の世界に戻って来たのである。   なぜわざわざこちらに戻ってきたのかといえばーーー それはまた後程語るとしよう。 ソラスが私の手を引く。飼い葉を積んだ荷車を馬で引く壮年の男性が遠くに見えた。 私とソラスは通りかかった農夫に声を掛け、駅まで案内してもらうことになった。
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