部長

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 ねぇ、聞いて。私ね、職場の建物が見えた瞬間、動悸がするの。  全身がね、心がね、行きたくないって、拒否するの。  もうそうなったら無理なのよ。仕事は辛いのが当たり前っていう人がいるけど、そんな次元じゃないの。生きてる心地がしないのよ。だって、行ったら敵しかいないのよ。私以外、皆敵なのよ。そんなの、もう無理じゃない。例え食べていくためのお金を稼ぐ場所であったとしても、その場所がただの苦痛しかない場所で、逆に体調を崩してしまうんじゃ……行ってる意味が、ない気しかしないのよ。だから、ごめんなさい。私はもう無理。明日……退職するわ。  ああ……それ、本当? 私に、いてほしいって言ってくれるの? そんなの、貴女だけよ……そんな……ああ、ごめんなさい。ちょっと、涙もろくて……。フフ、話してよかったわ。私、これだけは間違ってなかったみたいね。貴女がいてよかった。貴女に話して、よかった。  ずっとね、思ってたの。貴女は誰にでも仲良く接するから。すごいなぁ、って。苦手な人いないでしょ? ……え、居たの? 貴女でも? ……なんだか、信じられないわ。ああ、でも、なんだろう。なんだか、スッキリしたわ。貴女に話してよかった。でも、もっと早く話していれば変わったかなぁ。……フフ、今更ね。今まで、ありがとう。私、この職場に来て、貴女に会えたことだけはよかったと思ってるわ。
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