悲恋の輝き

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 私は絶望しました。もしも本当の不倫相手なら万々歳だったかもしれませんが、私はあくまで、ふたりの愛の象徴――彼らの「別れ」は、私の「不要」を意味するのです。  彼はしばらく呆然と立ちすくんでいましたが、やがて深くため息をついて肩を落とすと、苦々しく顔を歪めながら私を見つめ、ゆっくりと手を伸ばしました。  ――待って、待ってください!  私は懸命に抵抗しようとしましたが、男の人の力には勝てず、あっけなく外されてしまいます。  彼は、私を姐さんと一緒に仕事着の内ポケットに忍ばせました。不要品としては扱いが丁重な気がしますが、奥さんに対する未練がそうさせているのでしょうか。それとも……後で私たちを売りに出してしまうつもりなのでしょうか。  暗く閉ざされた空間の中で、ペンを走らせる音がします。離婚届に記入をしているのでしょう。  
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