悲恋の輝き

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 ――ねぇ待って! 聞いてください!  そんな彼に、私は必死に語りかけます。  ――私、知っていますよ。あなたが毎日、飲み会にも参加せず、夜遅くまで頑張っていたこと。  けれどもペンは止まりません。  ――全部奥さんのためなんでしょう? 彼女のこと、まだ好きなんですよね? 愛してるんですよね? だったら今からでも追いかけて、やり直そうって…… 「だから言ったのに」  ふいに、低い声が飛んできます。はっとすると、姐さんが冷ややかに輝いていました。 「しつこいようだけど、アタシとアンタは人の幸せのために作られた“モノ”なんだよ。だから、起こった物事に対して、嬉しいだの悲しいだのと考えちゃいけない。ろくなことにならないからね。実際、あんたはずいぶんと穢れちまったじゃないか」
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