ずーっとごめんね

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ずーっとごめんね

退社時間になり私が会社の正門を出るとジンちゃんがいきなりいた あっ 私がコウジと別れてから数ヶ月経ったある日 幼稚園、小学校、中学まで一緒だったジンちゃんに同窓会の時久しぶりに会って話に花が咲いた それから何となく電話をしてきてくるようになって その話の中で何時頃退社するとか話したことがあったのかも知れない それでサプライズで歩いて迎えに来てくれたようで 歩きだと色々話せて楽しいからなんだって ジンちゃんは同級生でスポーツマン、陸上や野球が特に長けていた ガッチリしていて頼もしい でもちょっと天然 物の見方で、そこ?みたいなズレがしばしばあったりするところもご愛嬌だった ジンちゃんと付き合う前、わたしはコウジと何年も付き合っていて かなり有名な仲良しカップルだった だから知っている人も多かったけどやはりいつも横から女子が入ってくる コウジには私じゃ物足りないのかも知れないといつも引け目に感じていた そんなことが、何回もあって結局、別れてしまい傷心の私に優しくしてきてくれたジンちゃんと、同窓会が、きっかけで何となく会うようになっていった そんな中でもたまにコウジに電話してしまっていた 今、ジンちゃんとよく会ってるの そう、でもあまり思わせぶりしないほうがいいぞ え?だって、ジンちゃんは幼稚園から一緒だよ そんな風に見てないと思うよ そうかな? わかんねーぞ なんてコウジとの会話があった矢先にジンちゃんから付き合って欲しいと言われたんだった びっくりしたけど、いいと思った、その時は ジンちゃんと、付き合って2.3ヶ月が経った頃 久しぶりにコウジと電話で話した時のこと コウジが、もう一回俺と付き合ってくれない?と言った えっ? ジョーダンじゃないわよ いつも女の子がたくさん入ってくるし悲しいから嫌だよ と、言うのが当たり前だったんだろうに 当時の私はまた付き合いたいと思ってしまった ましてや、嬉しいとさえ思ったのを覚えている それからしばらくしてまた、会社に迎えに来てくれたジンちゃんに私は言いにくかったけど正直に話をしてしまった ジンちゃんは うーん‥コウジはかっこいいもんな そうか、元に戻るってことか 俺さ、君とさ、別れるなんてコウジはどうかしてると思ってたんだょ だってこんないい子なかなかいないもんな 別れてわかったんじゃないのかな そっか‥‥ じゃあさ、もしまたコウジとダメになったりしたら俺に絶対に連絡してよね いや、そんな図々しいことできない いやいーから 絶対だよ じゃあ うまく行くといいね と言って先に走って行ってしまった 申し訳ないけど自分に正直になりたかった ジンちゃんを傷つけたけどそれでも仕方ないと思ってしまっていた 私はまたコウジと付き合い始めたものの、努力したけどやっぱり寂しさだけが募って 2ヶ月くらいで心が限界になった 今回が最後と決めていた 何があっても後悔しないように付き合おうと決めていたから だからかなり落ち込んだけど自分が決めたことだし乗り越えていくしかなかった そんなある日、会社の近くでジンちゃんとばったり会った もしかしたら待っていてくれたのかも知れない おっ、こんにちは 久しぶり!元気でやってる? 私は全然元気なんかなかったけど あ、ジンちゃん あれからコウジとうまくやってる? う、うん‥ そう言うのがやっとだった そうか、じゃあ、良かったよ じゃあな、うまくやれよ と言って去って行った 元気がないように明らかに見えたはずだけどそれは私が気まずいからそんな顔をしていると思ったんだろう それきり、ジンちゃんは私の前に現れなくなった あれから何年もたった それぞれ結婚したのも知っている お子さん連れの時に会ったこともある 同窓会で男子のまとめ役をお願いしたこともあったから何回も話しているのに なのに でもあの時の胸の内を話すことはなかった 年月は過ぎ、ある年の同窓会でのこと 毎年、私はすっかり主催者になっていて ありがたいことにジンちゃんは毎年参加してくれていた 私がみんなと離れてお店に支払うお金の準備をしていた時のこと ジンちゃんがスーッときて あの時、俺付き合ってたの? と、小さな声で私に言った あまりにも突然で 脈絡もなく 私は何も言わなかった  言えなかったといったほうが合っているかも知れない ジンちゃんは何事もなかったように私のそばからスーッといなくなった 確かに少しお酒が入っていたのは事実だったけど ジンちゃんにとっては小さいながらもまだその時の種火のような痛みは消えていなかったんだと思って複雑な気持ちになった 申し訳ない あの時はごめんなさい 言えなかった言葉 未だに言えていない言葉 実は私の中にも若いときのそのことはチクリとした痛みに似た申し訳なさが今も残っていたのも事実だった でも今更と思っていた 蓋をしているのもわかっていたんだけどね もしかしたらいつかジンちゃんの隣にスーッと寄って行って あの時私たち付き合ってたよ って言おうかなと思っているんだけどおかしいかな
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