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『Red Roses For A Blue Lady』
「残念ですが、もう旦那さん目は一生見えません。完治どころか視力を取り戻すことも、難しいでしょう」
夫の主治医は私の目をしかっかりと見つめ、なるべく余計な感情を込めないように、平板な口調で話した。
市内の総合病院の8階の診察室にいた。内科系の患者が入院している階で、夫は三週間前に突然光を失いこの病院に運び込まれた。
私はパートで働いている最中に突然呼び出され、パニックになった。ただただオロオロするしかない私に夫は言った。
「大丈夫だから。ちょっとの間見えないだけだろう。きっと先生が治してくれるよ。その間、お義母さんや隆くんに応援を頼んで、子供達を見てもらおう」
私はなるべくことを大きくしないことばかり考えていたが、その夫の言葉を聞いて、そんなこと言ってる場合じゃないんだ。家族、親戚みんなで乗り切らないといけないんだ。そう腹をくくることができた。
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