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「一級品とのことですが、具体的にどこがどう一級品なのか説明いただけますか?」と職員の女性がすかさず口を挟みました。
「ですから、先ほども申し上げましたが、まず、紙が違います。このあたりではそう簡単に手に入らない高級品が使われています。絵の具もそうです。特殊な顔料が使われています。私共はプロですから一目でわかります」
「つまり、なんていうんですか…『画材』ですか?画材がいいというだけですか?」
職員の皮肉った質問に、赤いスーツの女性は、悪い物を食べてお腹を壊したときのような歪んだ表情をしました。
「いえいえ『まずは』ということでお話しただけであって、最初に申し上げた通り、構図や色合いといった様々な観点からも一級品とみています。その点については、ここにいる会員メンバーも皆、意見を同じくするところです」
赤いスーツの女性はそう言って、他のメンバーの発言を促すように目配せをしました。しかし、そもそもその目配せを見ていないメンバーもいたためか、すぐにフォローする人は誰もいませんでした。
少し気まずく思った赤いスーツの女性は、もう一度催促しようと言葉をつなげました。
「メンバーは常にそれぞれの専門的な見地から作品を評価しています。今回の絵についても同様に、それぞれの見方がありますので、その辺をご紹介させていただきたいと思います」
そしてメンバーの顔を覗き込み、再び催促をしました。それはそれは、すごい目力でした。
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