Day 2

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 「しかしそれにしても佐山さん。こう言うのもいくぶん失礼かもしれないけど、しばらく見ない間に、なんだかすっかり小綺麗になって、若々しくなりましたね。退職されてから、なんかいい事でもあったんですか?」  「愛犬が死にました」  「え?あ〜、あの長く飼っていたあのワンちゃんが?これはこれは、失礼しました…。それはそれは、悲しかったでしょうに…」  「『飼っていた』のではありません。共に人生を歩んでいたのです。私にとってはペットではありませんでした。人生のパートナーだったんです。先生もそうです。先生と犬。同じなんです!」  「え?い、犬と同じ?」  「あ、はい、すみません。先生が犬と同等だと言ってるわけではありません。私にとって人生のパートナーという意味で同じだ、ということです」  「あ、はい、分かります、分かります。なんか、こう、すごく…何というか、ありがとう…かな?」  「しかし先生、『犬が居ぬ』とはよく言ったもので…」  「はい、ダジャレね…」  「あ、はい、すみません、先生。犬がいなくなると本当に寂しいもので、散歩もしなくなりますし、しばらく私は本当に引きこもり状態だったのです…」  「そうですか…それはそれは大変でしたね…」  私たちは一息ついて、またスコッチを注ぎ合った。
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