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そんな成り行きを知らずに束砂さんは、とぼとぼ街を歩く。誕生日がクリスマスの季節だからこそ、ちょっと切なくもあるが、ときには二倍の喜びがある。それを分かち合える誕生日が近い五丁目さんが苦労しているのだから、これでいいのだ。
立ち止まる空を見上げる。撮影が終わる頃にはすっかり暗い冬の空の足元にはイルミネーション。誰かがイルミネーションの下で路上ライブを行っていた。束砂さんの視線はそちらに吸い込まれていく。
ギターを手に歌っていたのは五丁目さん。そのまわりには幾人かの観客。立ち止まる人通り過ぎる人座ってゆっくりと聞いている人。
束砂さんもそんな観客に混じって五丁目さんの歌声を聞く。クリスマスソングがいくつも奏でられ、それを歌う五丁目さんは笑顔であった。
一通りの曲が終わり、五丁目は一礼をする。拍手が鳴り、観客たちは動き出す。その中、束砂さんは声をあげた。
「大変なのにこんなことしてていいのですか?」
ゆっくりと微笑む五丁目さん。
「大変なときだから楽しむんです。どうせ私はにょたチョコ男子なんですから、人を楽しませて自らも楽しんで、真顔を笑顔にしたいんです」
あ……、と束砂さんは声を漏らす。
「そうですよね……。五丁目さんはそんな人ですよね。今年も皆さん、誕生日祝ってくれるそうです」
「それは楽しみです」
それから数日のあと、束砂さんと五丁目さんの誕生会が催された。それはイベントだった。チャリティーイベント。
「今回のイベントは、束砂さんチームVS五丁目さんチームの騎馬戦だ!七番勝負で一勝ごとに大将が欲しいプレゼントを渡す!負けたチームはメンバーの一人の私物をオークションにかけて、その売上は寄付!いいな!?」
また変なイベントでの誕生会。みんな変なイベントで着た扱いに困る衣装を売る気満々だ。
「処分!処分できる!束砂さん、負けて~!」
瑠璃くんの叫びが轟いた。
束砂さんチームは、瑠璃くん・良くん・香多くをん・げたんわくん・更紗さんの学生チーム。
五丁目さんチームは、タッくん・うたうものさん・アッキー・マッキー・はろんさんの大人チーム。
「やっぱり処分より買ってプレゼントゲットしたいですよなぁ」
タッくん、やる気満々。
「だけど、衣装がどのくらいで売れるか気になりません?」
真っ当な意見のうたうものさん。
にょたチョコ男子モデルじゃない、更紗さん・はろんさん・アッキー・マッキーはモデルたちと伊織先生の普段の写真をばら蒔く気満々だ。
「では、束砂さん勝負!」
「五丁目さん、負けませぬ!」
そうして誕生日プレゼント争奪戦&チャリティーオークションが幕を開けた。
掛け声は『ハッピーバースデイ!!』
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