02. レイナ

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その時、レイナが 俺の持っていたトートバッグに 一瞬視線を送ったように思えたが 俺にとってはほんの些細な出来事だった。 「上着どうぞ」 レイナは俺のスーツを脱がすと クローゼットのハンガーへ丁寧にかけてくれた。 「さっ!そろそろ全部脱ぎますかぁ?」 そう言って背中を向けたレイナを 後ろから腰に手を回して引き止めて 俺はレイナの耳元でこう囁いた。 「レイナちゃん…変なお願いしてもいいかな?」 「ん?どうしたの」 「今だけさ、カップルみたいに過ごさない?」 「うん、いいよ… ってか私はいつでもそうしてるつもりだから」 「じゃ今日は一段と…ね」 レイナは振り返って 俺の鼻先を指でつつきながらこう言った。 「かしこまりましたー!」 「…よかった、嫌がられるかと思ったよ」 「全然…そんなこと言われちゃうと逆に好きになりそう、楽しもうね」 俺たちは二人してあられもない姿になり シャワー室へ向かった。 「じゃ、行こう!」 バスタオル1枚だけを巻いたレイナの むき出しの肩に両手を置いたまま 俺は無言で頷き、中に入ると そっとレイナからバスタオルを剥がした。 「あれぇ?気が早ーい!」 「そうかな?」 「さっきまで真面目な顔してたのに、ね」 「でも頭の中は…」 「何考えてるの?」 「へへへ」 「もぅ!」 びっくりするくらいに俺の頭の中は あんなことやこんなことを妄想して すっかり色めきたっていた。
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