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今日は木曜日なので土曜日は明後日だ。ナオミははやる気持ちを抑えて朝ご飯を食べた。スクランブルエッグにトーストとサラダの洋食を口に運んでいるとお父さんがホットコーヒーを飲みながら新聞を読んで、「アイドル養成所なんてあるんだなあ」と言った。
「アイドル?」
「うん、広告が出ているよ。小学生から入れるみたいだ。女優やCMタレントが所属しているらしい」
「へー」
ナオミは関心なげに返事をした。
「ま、我が家には関係ないことか」
お父さんはそう言って「ハハハ」と笑った。
何時もの通学路を歩いて学校に行く。高校生が自転車でマフラーをはためかせて横を通り過ぎる。紺色のブレザーにチェックのスカートが可愛い。中学はひざ丈のプリーツスカートだ。早く赤や緑の可愛い制服が着たいと思う。学校に着き階段を上る。教室に入ると早く着いた女子たちが仲良く談笑をしていた。その輪に加わり優真ちゃんや友達に渋谷に行くことを自慢した。
「いいなー。渋谷かあ」
「うん、土曜日にね。電車で行くんだあ」
「渋谷に行くのならお洒落するの?」
そうだ。ナオミはいつも安い服を着ている。『いいむら』というファッション市場だ。
「どうしよう、私、『いいむら』の安物しかもってない」
「えー、渋谷に行くのに?」
優真ちゃんが大袈裟に驚く。
「今日、早く帰ってお母さんに洋服買って貰おうかな」
ナオミは顎に指をチョンチョンとつけて悩んだ。そこにユウタくんがやって来た。
「何を騒いでるの?」
「ナオミが土曜日にね、渋谷に行くんだって!でもね、服が無いらしいの」
ユウタくんはみんなの顔を見てから「服なんてなんでもいいと思うよ。ナオミちゃんは可愛いし」と真面目腐った顔をする。
「あっ、ラブラブ」
優真ちゃんがいつものように冷やかして来た。ユウタくんは気にも留めない様子だ。
「渋谷に行ったらさあ、スマホで写真を撮ってきてよ。マルキューとか銅像とか」
「うん、メールで送ろうか?」
ナオミは頬を緩めて答える。ユウタくんは頷いて「気を付けて行って来てね。写真楽しみにしてるよ」と言った。
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