焦れったい恋

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 坂城ナオミは幼馴染の岡田ユウタくんが好きだ。ユウタくんとは家が近くで小さな頃から一緒に遊んでいる。年齢も同じ11歳。クラスは違うけれど同じ公立の小学校に通っていた。  ナオミの家はお父さんが日本人、お母さんがイギリス人だ。家族内では日本語を話しているがナオミは茶色い髪だし、目も色素の薄い目をしている。そんな容貌だったから近寄りがたく思われたのか友達もあまり出来なかったがユウタくんだけは仲良くしてくれた。そのおかげで友達も徐々に増えた。  ユウタくんの家は3軒先なので朝は同じグループで登校している。緑のおばさんが笑顔で挨拶をしてくれた。 「ナオミちゃん、気を付けていってらっしゃいね」 「うん。でも今日は苦手な体育があるの。行きたくないなあ」  ユウタくんがそれを聞いて口を挟む。 「体育はナオミちゃんは得意そうに見えるから損してるんじゃない?。運動はね、僕、好きだよ。変わってあげられたらいいな」  ああ、ユウタくんは優しい。先月ナオミが咳をして登校していた時も心配してくれた。10月の終わりのことだ。 「ゴホン、ゴホン」 「大丈夫?風邪じゃない」  その日は朝一番にユウタくんに保健室に付いてきて貰って熱を測ったら38度あった。保健室の先生はベッドに寝かせてくれて2時間後にお母さんが迎えに来てくれたが、ユウタくんはその間ずっと心配してくれていたようだ。休み時間になると保健室に来て「ナオミちゃんは大丈夫ですか?」と先生に聞く声が聞えてきた。それから3日寝込んだが、ユウタくんは学校帰りに学校からの連絡通知を郵便受けに入れて帰っていったようだ。メモ帳に「早く治るといいね」と下手くそな字で書いてあったのを覚えている。
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