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「桜輔」
ふいに名前を呼ばれて、またはっとする。
「いい名前だよね」
微笑み交じりの一言に、僕もあわてて笑顔を作った。
「姉ちゃんだって」
「そうかな」
おばあちゃんのセンスに感謝しなきゃ、とふたりで笑い合ったとき、薄く透けた彼女の体が、蛍のような淡い光を放ち始める。
いつの間にか、周囲もあたたかな黄金色に包まれていた。そろそろ時間らしい。
大丈夫。
彼女はこの後も、天からのお告げに抗うように三十分ほどひたすらに喋り続け、いよいよ体が消えようという頃になってようやく「また来年ね」と言って笑うのだ。
今までずっと、ずっとそうだった。だから、大丈夫だ。
「ねえ、おうちゃん」
その呼びかけには、確かな決意が滲んでいて、心がいやにさざめく。
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