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陽離がいない。陽離がいない。陽離がいない。いなくなった。
これで僕は陽離に照らされなくて済む。
夜弥のままでいられる。
僕らは永遠に交わることのない平行線。
光が強くなれば闇はかき消される。
だから僕は、僕がいなくなってしまう前に光を消したのだ。
――陽離を消した。
「くっ、ふっ、あはは……」
喉の奥から笑いが漏れる。
楽しくなんてない。
瞳から温かい滴が零れ落ちた。
悲しくなんてない。
ただただ虚しいだけだ。
――ああ、僕が求めていたのはこんなものじゃなかった。
重たい足を引きずるように窓際まで歩いていく。
窓を開けると冷たい夜風が吹き込んできた。
「この世界に、僕の求める『楽園』なんて在りはしない。それなら、僕は……」
何の感情もなかった。あるのは虚無だけ。
空っぽの心と体で僕は窓から飛び降りる。
光のない闇の中、僕は自分の頭が砕ける音を聞いていた。
The end.
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