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動かなくなった陽離は、もう眩しくなかった。
ほっと、安堵したのも束の間。僕の心は喪失感に襲われていた。
強い吐き気がする。
ただの肉の塊になった陽離だったもの。
動かない、熱を持たない、冷えていくだけの肉塊が僕を蔑む。
「ひーちゃん、やめてよ。やめてったら! そんな目で僕を見るなっ!!」
並んでいた椅子で陽離の顔を殴る。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
ただひたすら、僕の心から陽離が消えてしまうまで。殴り続けた。
赤に混じって黄ばんだ白が飛んできた。
象牙色のそれは、陽離の歯で。
砕けた顎には、幾つかの歯を残すだけ。
そこまでして、やっと僕は吐き気から解放された。
求めていた安堵感は欠片もなかったが、落ち着くことができた。
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