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僕は飛永柊(しゅう)。
大学1年生。
書店でバイトをしている。
僕は、本が好き。
だから、ここにバイトを決めた。
でも、自分に自信が無い。
だから、レジでは無く、本を出す、整える役目をしている。
僕には、
毎日の楽しみがある。
それは、
いつもこの本屋を訪れる彼を眺めること。
本が余程好きなんだろう。
ここが、
行きつけの本屋なんだろう。
僕にとっては、
それはラッキーだった。
彼の姿をこっそりと、
眺めることが出来る。
「飛永くん、そっちの本、こっちの棚にお願い。」
「あ、はい・・・」
僕は小声で応える。
本を本棚に並べる。
一応本屋のエプロンをしているから、
僕がここのバイトだってことは、
分かるだろう。
そんな僕に、
彼が、
初めて彼が、
話しかけてくれた。
「あの、すみません。この本、ありますか?」
スマホで示されたその本は、
哲学的な分野の本だった。
僕は、
ビクッと、
震えた。
彼の目が、
僕を捉える。
僕は、
真っ赤に紅潮した。
「あ、はい、お調べしますので、少々お、お待ちください・・・」
僕の小さな声・・・
聞こえただろうか?
僕に付いて、
レジにあるパソコンのところに来てくれる。
僕は、
ソワソワした。
落ち着け、僕。
パソコンでその本を検索すると、
在庫があることが分かった。
どこの棚にあるのかも、
示されている。
「あ、あの、こちらです。」
また、僕の小さな声・・・
僕に付いてきてくれる。
「こ、こちらです。」
僕は、
本を手に取った。
「ああ、ありがとうございます。」
本を渡す時に、
少しだけ、手が触れた。
僕は、
ビクッと震える。
「?」
彼が、
不思議そうな顔で僕を見る。
や・・・見ないで・・・
僕は顔を伏せる。
レジまで案内して、
僕は彼から離れた。
まだ僕のことを見てる・・・
恥ずかしい・・・
僕は熱い頬をしたまま、
顔を俯ける。
でも・・・嬉しかった。
初めて、
言葉を交わした。
また、
来てくれるといいな・・・
僕の心は、
期待に胸が膨らんだ。
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