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扉の鍵が開けられ、
望さんはすぐにこのリビングに入ってきた。
望さん・・・
僕・・・
悪い子かな・・・
安堂くんが来てくれて嬉しいって思っちゃってる・・・
疲れ切った様子の望さんは、
顔を上げるとすぐに安堂くんに気付いた。
険しい顔になる望さん・・・
やっぱり僕・・・
間違えた?・・・
「何故君がここに居るのかな?って・・・聞くまでも無いか。柊が連絡したんだろう。」
「いえ、俺が、強引にここの場所を聞き出して、強引に来てしまったんです。留守に上がり込んでしまい、申し訳ありません。」
「いいよ、下手な嘘をつかなくて。大体は分かってる。」
そう言う間も望さんは気だるそうで疲れた顔をして・・・
全然僕の方を見ない・・・
やっぱり僕に愛想が尽きた?・・・
「ちょっと柊と二人だけで話させてくれないか?」
「もちろん、俺はもう失礼します。」
安堂くんは、
僕の顔を見て、
大丈夫、
と言う風に頷いて、
乗ってきていた車で行ってしまった。
望さんと二人きりになる。
しんと静まった部屋。
僕は何をどう言おうか考えてる、
でも、
何をどう言おうか、
僕には分からなかった。
そうしたら望さんが、
僕の手をキュッと、
握った。
握られた手が小刻みに震えていた。
どうして?
僕が怒らせたから?
ソファに一緒に座らされる。
「ごめんね、柊。俺、都内で仕事が立て込んでて・・・その関係で女性と関係を持ってしまった・・・それを柊にどう言おうか悩んでて・・・」
え・・・
え・・・
女性と関係を?・・・
やっぱり僕はもう飽きられたの?
「俺のこと、許してくれる?俺の一番は、柊なんだ。」
僕を見つめる瞳が優しかった。
でも小刻みに震える手は不安を伝えてくる。
僕・・・
僕に許しを請うの?
なんで僕なんかに・・・
女性の方がいいに決まってる・・・
僕・・・僕・・・
僕なんてここに居ない方がいい・・・
僕はスマホを手に、
扉を飛び出していた。
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