別れ

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靴だけ履いて、 玄関を抜けて走り続ける。 望さんは後を追って来なかった。 しばらく走って、 望さんが来ないことを確認すると、 僕はホーッと、 溜息をついた。 追って来ないってことは・・・ やっぱり、 そういうこと・・・だよね?・・・ もう、 僕は、 望さんにとって、 不必要なもの・・・ そう考えたら、 ずんっと足が重たく感じた。 とぼとぼと何も無い道を歩く。 もう夕暮れ時で、 長い影が伸びていた。 「飛永!」 ふいに名を呼ばれ顔を上げると、 そこには車から降りてきた安堂くんが居た。 まだ・・・ 帰って居なかったの?・・・ 僕が、 飛び出してくるって、 分かってたの?・・・ 「なんで・・・・・・」 「俺と来い、飛永。少し距離を置いた方がいい。」 「・・・なんでそんなこと・・・・・・・・」 「望さんは、お前に干渉し過ぎだ。大学もバイトも辞めさせるなんて・・・そう思いながらも、お前を行かせてしまったことに、後悔していた。まだ、やり直せる。自立した生活を、送りたいんだろ?」 「なんで・・・・・・・・・・」 僕は何度もなんでなんでと安堂くんに問うていた。 瞳からは涙が溢れ出して、止めども無かった。 なんで涙が出るの?・・・ 望さんに飽きられて捨てられたから? 安堂くんの言ってることが正しいと思うから? 僕は自分で自分がどうすべきなのか、 全く分からなくなっていた。
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