別れ

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僕は安堂くんの運転する車に乗って、 彼のアパートに辿りついた。 「今日は俺の所に泊まれ。」 優しい声で、 それでも有無を言わさぬ強さがあった。 駐車場から歩いてすぐの所に、 安堂くんのアパートはあった。 階段を、 安堂くんに付いて上った。 昔僕が住んでいたような、 シンプルなアパートだった。 「貧相な部屋で悪いけど、しばらく我慢してくれ。」 安堂くんが、 頬を赤くして僕に言った。 僕はぶんぶんと顔を振って、 それを否定した。 「僕の方こそ、面倒掛けてご、ゴメンね・・・」 僕の声は尻すぼみに小さくなっていった。 部屋に入ると、 安堂くんはベッドでは寝ないんだな、って、知った。 勉強用のデスクと、 ちゃぶ台が置いてある。 その向こうに無造作に置いてある布団が見えた。 「そこ、座ってて。お茶入れるから。」 僕は素直にちゃぶ台の傍に腰を下ろした。 これからどうすればいいんだろう・・・ 僕はもう望さんの元には帰れないんだろうか? 色々な思いが脳裏を掠めたけど、 何も答えは出なかった。 目の前に居る安堂くんに頼るしか僕には出来ない。
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