別れ

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夢かと思った。 僕を・・・愛して・・・・・・ そう茶色の瞳を潤ませて上目遣いに見られた時は・・・ 夢かと・・・ もう何年も想い続けていたこと。 飛永を愛すること。 諦めていたこと。 俺はその潤んだ瞳を見て、 もういいんだ・・・ そう思った。 俺を選んでくれたんだ・・・飛永は・・・ 俺は彼の冷たくなり始めた体をギュッと抱き締めた。 初めてと言ってもいい・・・ 彼の唇に深い深いキスをした。 甘い甘いキスだった。 舌を絡め合わせ、 次第に息が上がる。 唾液を垂らしながら、 キスを続ける。 じん・・・と・・・ 体の底から感じる疼き・・・ でも・・・ でも飛永を傷付けてはいけない。 出来るだけ優しく優しく・・・ 俺は飛永に接したかった。 長年願った夢が、 本当に叶った。 初めて見た時から、 俺は彼に惹かれていた。 だからあの大学での共同作業が、 俺にはとても嬉しい物だった。 控えめにだけれど、 意見を言う彼に、 本気で恋をしたのだ。 男だとか、 そういうのは全く関係無く・・・ ただ好きになったのが、 彼だったというだけ・・・ 純粋だった。 心も体も。 純粋な彼に釘付けになった。 色白で、 黒目がちな瞳で、 細い体躯で、 清潔感が肌からにじみ出て居た。 あの彼が、 今俺の腕の中に居る。 夢では無いだろうか・・・ スースーと、 静かな寝息を立てている。 可愛い横顔を見せながら・・・ 俺はもう迷わない。 これから先は、 飛永は俺のものだ。 誰にも譲らない。 望さんにだって、 もう譲ったりはしない。 もうずっと以前から思ってきた思いが、 やっと実を結んだんだ。 これ以上幸せなことは無い。 明日の朝、 起きたら何と言おう? おはよう? それとも、 柊、 と呼び捨てで呼んでみようか・・・ 俺は彼の横に身を横たえ、 そんな大切な想いを抱えながら眠りに就いた。
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