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「はい。」
と言う声が聞こえてすぐに・・・
ドアスコープでこちらを見たんだろう。
望さんが、
すぐに扉を開けて息を切らせて出てきた。
裸足でこちらに向かう・・・
「柊!!」
望さんがこちらに来るのを、
どこか遠くを見る目をして見つめる飛永。
「どこに行っていたんだ?今まで・・・」
望さんが飛永の腕を取ろうとしていたので、
俺がその間に入って遮った。
「・・・っ、君は・・・安堂くん・・・だっけ・・・」
「はい、飛永は、今俺と付き合ってます。貴方には、さよならの挨拶をしたいと言うので連れてきました。」
あくまでも、
俺の保護下に彼があると悟らせる。
望さんは、
髪の毛は伸び放題、
髭も伸び放題、
目の下のクマもくっきりとしていて、
とても疲れて見えた。
「・・・・・・分かった・・・・・・・・柊と話をしても?・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
俺はたっぷりと時間をかけて、
飛永を自由にした。
望さんは、
飛永の手を取った。
「ごめん・・・ゴメンね・・・柊・・・・・俺、君が一番大事なのに・・・いい気になって、女性と・・・・・・・・でも、でも俺が一番大切なのは・・・君・・・なんだよ・・・・・・・出て行かれた時、どうしようかと思った。君が行く所なんて、すぐに分かったけど、俺が今顔を出したとして、一緒に帰ってきてくれるとは思えなくて・・・時間が掛かってしまった・・・・・・柊・・・どうしたら俺を許してくれる?女性とは、たった一度の過ちだ・・・・」
飛永は、
望さんの手を握り返して、
微笑んだ。
天使のような微笑みだった。
「の、望さん・・・ぼ、僕のこと、思って居てくれてありがとうございます。で、でも、ぼ、僕はもう、貴方のものではありません。ぼ、僕は・・・あ、安堂くんと共にい、生きていきます・・・今日は、さ、さよならを言いに、き、来ました・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
呆然と立ち尽くす望さん。
天使の笑みを帯びた飛永。
望さんはその足下に崩れ落ちた。
飛永の靴を必死に触る。
「も、もう、ダメなのか?柊・・・お、俺、もう君以外何も要らないんだ・・・ずっとずっと君のこと・・・ずっと思ってきて、なんで失敗してしまったんだろう・・・君を愛することを・・・なんで失敗してしまったんだろう・・・・・・」
飛永は、
崩れ落ちている望さんを引っ張り上げ、
顔を見つめると、
再び微笑んだ。
「の、望さん・・・あ、貴方にはこれからも、もっといい人が現れます・・・僕よりもっともっと・・・あ、貴方に相応しい人が・・・だから・・・だ、だからもう・・・僕のことは忘れてください・・・」
優しい優しい笑みだった。
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