第一章 最悪の金曜日~やけ酒と過ちの一夜

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 オーナーの冬夜は毎日来ているわけではないようだ。もし毎日店に出ていたら、かなり混雑しそうだ。隠れ家という店名なので、混雑は回避したいと思う。  でも、中村(なかむら)夫妻-昴流と芽生-が訪れる時は必ずいると聞いた。家族と同じだからだろう。  今日はいないと思った。  芽生の身体を心配して、昴流が飲んでいないのは知っている。連休前の金曜日だけど同じはず。  襲ったに近い形で妊娠させたから、昴流は芽生に異常に過保護だ。罪悪感だけでなくて愛情もあるだろうけど、学生の芽生に大きな負担を掛けたことを、昴流は今でも悔やんでいる。  弥生(みお)は最初反対したけど、芽生は、自分を襲った昴流との結婚を決めた。  予期しない妊娠で難しい選択を迫られた時の芽生を支えたから、簡単に今の生活になっていないと知っている。でも、弥生からは、芽生は、誰もが欲しがる幸せをすべて手にしているように見えて羨ましかった。
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