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彼女はグラスの足を持つと、味わいもしないで一気にカクテルを飲み干した。軽い後味で、アルコール度数は低そうだった。
「強い酒って言ったでしょ」
すごむ弥生に、涼は年上なのに押されているのが分かる。
(どうせ、あたしは可愛げのない女なのよ……)
睨むと、涼は渋々違うカクテルを作りだした。弥生も知っている有名なカクテルだ。
マンハッタン*-カクテルの女王という異名があるそうだ。
度数が割と高いとも聞いている。最後にチェリーを入れるのが正式だけど、可愛いと思うだけで苛立つ。女王なら、もっと凛々しくしてほしいと、弥生は意味不明な文句を心の中でつぶやいていた……
「そのままでいいから。チェリー入れないで」
作っている涼は、荒れる弥生に怯えたまま頷くと、何も入れないで彼女の前に出した。
(こんな女なら何度も見てるでしょ)
ホストクラブなら、いろいろな理由で荒れている女性が来るのは日常のはずなのにと、弥生は涼を斜めに見た。
*ウィスキーをベースに、スイート・ベルモット(フレーバードワイン)とアンゴスチュラ・ビターズ(複数の材料を蒸留酒に付け込んで作る苦みの強いアルコール飲料)を氷入りのミキシンググラスでステアして(混ぜて)、カクテルグラスに注ぎます。ピンに刺したチェリーを加えたりします。
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