第一章 最悪の金曜日~やけ酒と過ちの一夜

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 冬夜が離れる刺激でも弥生(みお)の身体は反応した。少しの刺激にも感じる弥生を見て冬夜は嬉しそうだ。  「すごいよね……俺、まだ足りないよ。さすがに若くないから一回休まないと」  言いながら冬夜が弥生を抱き締めてきた。汗の(にじ)んだ身体が触れ合う。  「弥生、三連休だよね……それなら、ずっと一緒だね」  その言葉は弥生に痛みを感じさせた。本当は健司から聞かされるはずの言葉だった。快感とは違う震えが起こり、弥生の瞳から涙が(あふ)れた。  「弥生……」  心配そうな冬夜に弥生は返せなかった。怒りと興奮で抑えられていた悲しみが、冬夜の優しい声をきっかけに溢れたようで涙が止まらなかった。  しゃくりあげる弥生の背中を、冬夜は静かにさすってくれた。穏やかな仕草に、弥生は余計に涙が(こぼ)れた。  勝気な弥生だったから、健司と別れた時のように、いつもは泣かずに怒っていた。でも、身体を許した冬夜だからか、(つら)い一晩をともにしたからか、構えないで弥生は久しぶりに泣いていた。
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