第一章 最悪の金曜日~やけ酒と過ちの一夜

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 ***  大学を卒業した弥生(みお)は、念願(かな)って気象庁に入ることができた。  一緒の学部で優秀だった芽生(めい)は大学院に進学を決めており、弥生は先に、友人が希望していた組織に加わった。  でも、卒業寸前、芽生は妊娠が発覚して大学院は休学。来年まで、妊娠と出産に備えることになった。  芽生は、大学一年の時に一度目の妊娠をして学生結婚をした。今回、二人目を妊娠したわけだ。大学院で勉強することは延期になったけど、女性としての幸せは充分に得ている。  彼女と夫は中学高校の同級生で、当時から仲のいい友人だったそうだ。好意を感じていた芽生に対して、彼には恋人がおり、友人以上にはなれなかったと彼女から聞いた。  高校卒業後に恋人の傍にいたいと、隣りの県に就職した彼は裏切られて、何もかも()くして秘かに実家にある街に帰ってきた。でも、両親に素直に会えない彼は、助けてくれた人を頼って夜の世界で働くようになった。そこで芽生と再会して、妊娠が先だったけど結婚。  元カノの非常識な行動で大変な目に()ったけど無事に出産。彼もホストを()めて、建築士になるために設計事務所へ就職して、今は家族三人で穏やかに暮らしている。  妊娠の時に芽生を傷つけた事実があるからか、妻と娘を過保護なほど大事にしている男性だ。
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