第三章 終わりと始まり

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 ***  勇矢といて安心だからか、人が大勢いるから大丈夫と感じたのか、紗彩(さや)は注文した品物を完食した。  空腹が解消されると気分が上昇する。食事は大事だと、今さらのように紗彩は実感した。  「それじゃ、ドライブしようか。行きたいところある?」  食事の前も同じことを()かれた。紗彩は今度は答えた。  「どこってほどではないんですけど、綺麗な海が見たいです。気分転換に」  聞いた勇矢は笑顔で了承すると、紗彩と一緒に駐車場に向かった。  「適当に走るね。夕食も一緒にしない?」  どんな店に連れていかれるかと思うと、かなり不安だけど、別の不安が消えるからいいのかもしれない。  少なくても良一のことは忘れていられそうだ。  「いいですね。あまり高級でない店がいいですけど……」  遠慮がちに言うと、勇矢はハンドルを握ったまま笑いだした。
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