夢のなかに

1/3
前へ
/13ページ
次へ

夢のなかに

 今日は西。  紙に綴ったとき赤い風が吹いて吹いて吹いて、会ったことのありそうな人が寄ってきた。足元の猫が鳴いていた。 『その―――、もう終わりそう?』  終わりそうだよ、みたいなことを曖昧に言って、歩いて行った。大きな通りの時計は長針を11に、短針を6に向けていた。空が明るいことを覚えた。右手の紙には色んな言葉が書かれていた。そうそう、そんなことを思ったんだよ。向こうに覚めたとき忘れないようにしよう。  向こうってどこだ?  へんてこな交差点の真ん中に立ってクラクションが鳴いているのを聞いて、猫がお腹を空かせていることを思い出した。  帰らなきゃ、どうして?  問いかけを通り過ぎて少し歩くとトンネルが見えた。長くもないのであるものもない。ないものがあるのである向こうに着いた。  
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加