夢のなかを

2/3
前へ
/13ページ
次へ
 パンとスープを食べて、家にやって来た猫に缶詰を与えて、読みかけの本を読んで、南の窓の外を見つめる。昨日と同じことをしているのに違うところがあるのはそういうことだ。喉まででかかった『夢』の話が思い出せない。いい言葉だと思ったから忘れないようにしよう。と思ったことだけは相変わらず覚えていた。 *AM 36:47*  おか、おか……  突然頭に聞き覚えのある言葉が流れてきた。というのも南の窓の外を見つめていたら缶詰を与えた猫が通り過ぎて、風が吹いたら赤いものが飛んできてさらに飛ばされていたからだ。  昨日より寒くないのに寒いと思うのはどうしてだろう。覚えていたいのに覚えていないのはどうしてだろう。頭ばかりで考えていると錆びついてしまうよ。と誰かが言っていたのをなんとなく思い出しながら考え続ける。そしてだんだん面倒くさくなって考えるのをやめたところで構ってほしい猫が鳴いているのに気づいた。  どうして窓から入って来るんだろう。と思って窓を開けた。寒かった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加