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突如名指しされ、すでに決定事項のように帰ると言われ、思わず声をあげる。
周囲のもの言いたげな視線が突き刺さるけれど、優樹だって初耳なのだ。
(えっ……? だよね? それとも私、何か忘れてる?)
やり取りしたメッセージを振り返ってみたが、そんな話をした覚えはない。もしかして受信していないメッセージでもあるのだろう。疑ってみるけれど、今スマホを手に取るのはさすがに場違いだろう。
「ゆきさんを迎えにきた」
「あ、ええと……」
場の空気を読まずにひたすら主張を通す彼と、まだ受け止め切れていない優樹。
時が止まったかのような状況に、炸裂音が鳴り響いた。右隣に座っていた友人がパン、と手のひらを打ち鳴らしたのだ。
「そっかあ〜なるほどなるほどそういうわけね」
にやにやと笑いながら、肘で優樹の脇腹をぐいぐいと押してくる。
「いやー、姉さんも隅に置けませんなあ」
「あーね、そういう感じ?」
「もうクリスマスだもんねー」
他のメンバーもしたり顔でうなずき始める。
(えっ、なにがそういう?)
こうなると優樹だけが取り残されたような感じだ。
そのうちおめでとう、なんて拍手をされてしまい、いよいよ取り返しがつかない。
(これってやっぱり、勘違いされてるよね?)
みんなは彼氏が迎えにきたのだとでも思ったのだろう。
発端になった彼になんとかしてくれという期待を込めて視線を送るけれど、なぜだか訂正してくれる気配がない。
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