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ガーデンプレイスまでの距離
「えっと、どっか行きたいとこある?」
何か用事でもあるのかと思い訪ねてみると、彼は「なんか食べたい」とつぶやいた。
「ご飯まだ食べてないの?」
「うん」
「じゃあ、どこかお店探そっか」
居酒屋ではドリンクは頼んでいたけれど、食事はすでに片付いた後だった。ますます申し訳ない。責任を感じながら、優樹はスマホを手に取った。食べたいものを聞いてみると、彼は考え込む様子を見せる。
「二次会で行かなそうなとこかな」
「ああ、みんなに会ったらまずいもんね」
それならバーは除外でいいだろうか。ガッツリ食べたい場合は定食屋か、肉バル的なものもいいかもしれない。検索画面を開いてキーワードを入力しようとしていると、彼が再び口を開いた。
「ちょっと歩いてもいい?」
「うん、平気。どこか気になるお店あった?」
「ガーデンプレイス。さっきの店から離れてるし、たぶん今綺麗だから」
「そうなの?」
「イルミネーション」
そう言われて、クリスマスが近いことを思い出す。商店街の街灯にも、ささやかながら豆電球が巻かれてぴかぴかと光を放っている。
(イルミネーションなんて見に行くの、どれくらいぶりだろう……)
頭の中に二年前に海をモチーフにしたテーマパークで見た、巨大なクリスマスツリーが思い浮かぶ。背後の船も電飾で飾られいたことが印象に残っている。
(確か納涼会のビンゴでチケットが当たって、女友達誘って行ったんだったよなあ)
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