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(って、これ一昨年の話だし。去年はどうしてたんだっけ?)
記憶をたどってみると、ちょうどクリスマス直前に婚活パーティーで出会った彼氏候補と音信不通になったという忌まわしい記憶がよみがえった。
(あー……あの時はヘコんだな)
今となっては相手の名前さえあやふやだが、当時は婚活疲れもピークだったこともあり、こうして思い出すだけでもダメージを感じる。
(やだやだ、もっと楽しい思い出なかったっけ)
さらに思考を深めるけれど、そもそもこの時期に相手がいたこと自体がまれだったことに気がつく。
つくづくクリスマスに縁のない女だということを思い知らされて、優樹はすっかりしょげていた。
「ゆきさん?」
呼ばわる声が遠い。いつのまにか足元に落ちていた視線を上げると、2メートルほど離れた場所で彼が足を止めている。
「あ……ごめん!」
「いや、俺も歩くの早すぎたから。平気?」
「うん、なんでもないの。行こ」
人と一緒にいる時に上の空になるなんていけないことだ。気を取り直して笑顔を作ると、小走りで彼のもとへ近寄る。無事に合流できたところで、彼の方から手が差し出される。
「え……っと」
手のひらをじっと見下ろしていると、長い指先がじれったそうにひらめいた。
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