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(ちょっと上の空になっただけで、こんなことに?)
もちろん嫌なわけではない。ただ、落ち着かないだけだ。
優樹はスキンシップに慣れていなかった。ましてや妙齢の男性相手ならなおさらだ。
気をまぎらわせるために周囲に目を向けてみると、駅前を行き交うのは仲睦まじげな男女ばかりだということに気づく。
(あっまぶしい……)
クリスマス前のオシャレな街は、恋人たちの絶好のデート先だ。時々足早に家路につくサラリーマンとすれ違うこともあるが、幸せそうなカップルが目につく。
向かっている先がガーデンプレイスだからかもしれない。もともとロケーションがいいし、確か高級なフレンチレストランがあったはずだ。今はイルミネーションもしているというから、クリスマスデートにはうってつけだろう。
そこまで考えたところで、自分の手が彼に握られていることを思い出す。
(まわりから見たら、私たちも……)
ふっとそんなことを考えてしまい、途端に頬が熱くなる。余計なことに意識を向けて、自分で自分の首を絞めてしまった。よこしまな考えを追い出そうとして、歩くことだけに集中する。
動く歩道を使うか聞かれて、首を振る。いくら意識外に置こうとしても、末端に触れたぬくもりが、強くも弱くもなく手を包み込む力加減が優樹の鼓動を高止まりさせる。心臓に悪いから早く着いてほしい、というのが正直なところだった。
動く歩道、スカイウォークを過ぎると目の前に広場が見えてくる。
「わ、すごい……!」
目の前に広がった光景に、優樹は思わず声をあげた。
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