11月XX日、金曜19:23

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 席を離れて薄暗い店内を歩く。小洒落た店はお手洗いも小洒落ていて、芳香剤と言いガラスのランプやタイル張りの洗面ボウルと言い、トイレとは思えないくらいムーディだった。  パウダールームの椅子に腰掛けて、握りしめていたスマホを操作する。 __まあ、私がいてもいなくても変わんないかな、って。  言葉を濁して伝えると、時間を置いたにもかかわらず瞬時に返信が返ってくる。 『俺なら退屈させないのに』 「ん?」 続いてもう一度、スマホが震える。 『ゆきさんのこと、ほったらかしになんかしない』 「は!?」 その内容に、思わず口から声がこぼれてしまう。 (ちょっとこの人、またそんな勘違いさせるようなこと言う) __今、結構しんどいから、そんなん言われたら惚れるわ。 「なーんてね、ハハッ」  直後にちゃかしたスタンプをタップしたけれど、送信前に返事が届いた。 __いいよ 「はああ!?」  優樹は思わずスツールから立ち上がった。その拍子に膝を化粧直し用の台にしたたかぶつけてしまう。 「いっ……たぁ……」  かがみこんで、ぶつけた場所に手を当てる。六〇デニールタイツの下では痣ができているかもしれない。
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