11月XX日、金曜19:23

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 生理的な涙がじわりとにじむ。化粧台に置かれたティッシュボックスに手を伸ばし、一枚失敬して目元を押さえる。  ティッシュには涙の水分とクリームアイカラーの細かなラメが散っていた。ぶつけた場所はまだじんじんと痺れている。  気を取り直してもう一度スマホの画面に目を向けた。もしかしたら幻聴ならぬ幻視だったのかもしれないと思ったが、先ほどと一言一句同じメッセージがしっかりと残っている。 「いやいやいや……」  どうとらえていいかわからない。彼とはけしてそういう関係ではなく、友達の友達くらいの間柄に始まり、今もたまーにランチやお茶をするくらいの異性の友人なのだ。友達以上恋人未満的な微妙な関係を感じたこともない。 (たぶん、同情してくれてるんだよね。そしたら……) 『ありがとう』と打とうとして、さっき送りそこねたスタンプを誤ってタップしてしまう。 「待って!?」  一瞬で画面上にお腹を抱えて笑い転げるブサカワなクマが現れて__長押しで送信取り消しを試みるけれど、その前に既読が付いてしまった。 「ああ……!」  せっかく元気づけてくれようとしたのに、失礼すぎる。気を悪くしたのか、優樹の送ったスタンプに対して彼からの返事はなかった。  厄日だろうか。今日は落ち込むことばかりだ。
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