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いくら成果のない合コンとはいえ、愚痴るなんて不義理なことをしたからバチが当たったのかもしれない。
この合コンがお開きになったら、改めてお詫びしよう。そう決めると、重い腰を上げてパウダールームを出る。
みんなの待つ部屋に戻って作り笑顔を振り撒きながら、さりげなく手首に巻いた時計に視線を落とす。まだ30分しか経ってない。
この30分の間に何度かスマホに通知が来たけれど、合コンメンバーからの『今日の会計、男女6:4ならカッコつく?』『二次会どうする?』『幹事パワーで連絡先交換する流れを作ってほしい』などという人任せ極まる質問や願望ばかりで優樹のSAN値はじわじわと減り続けていた。
(二次会、考えたくない……今日はもう帰りたいよ)
どう言ったら角がたたないだろうか。幹事のくせに、自分からお開きにするのは申し訳ない。参加してくれた人たちは楽しんでくれているみたいだし、せっかくうまくいっているのに、裏切っていいのか。
幹事とはそういうものという思い込みが、優樹を縛る。体調が良くないとかいくらでも理由をつけることはできるだろう。
けれどもつい周囲からどう見られるかを考えてしまう。本当は思ったことをそのまま言いたいし、心のままに行動したい。でも長年こういう生き方をしてきたのに、急に変えようと思っても難しい。
アラサーのサガといえばいいのか、優樹にはすっかり自己犠牲精神が身についていた。
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