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目をそらすのもおかしいと思い、優樹は視線を合わせたままへらりと笑いかけてみた。彼の方からは、どういう感情か判別のつかないまなざしがじっとそそがれている。
すでにマスクは顎まで下ろされていた。
(本当は来てくれてありがとう! って拝みたいくらいだけど……)
今彼は、他のメンバーから質問攻めにされているところで、優樹が話しかけるような隙はなさそうだった。
彼が来てくれたことで、ついさっきまで沈んでいた気持ちがウソのように楽になっている。参加者たちが自主的に行動し始めて、優樹の仕事が減ったというのも大きい。
場の空気を変えてくれた彼に、感謝しきりだ。この埋め合わせは必ず、と心に決める。しかし疑問なのは、彼が来てくれた理由だった。
残業もあったようだしこの飲み会も終盤なのに、わざわざ駆けつけてくれたということは、きっと何か理由があるはずなのだ。
(やっぱり出会い的なもの?)
自分が婚活中だからというのもあるが、合コンに参加する理由として一番ありえる理由だろう。それならちゃんと叶えてあげなくては。
そう決めた時、ちょうど二次会についての話題が上がった。
「ユウキくん来たばかりだし、二次会した方がいいよね、ゆきちゃん!?」
呼び寄せた手前、ちゃんと彼が楽しめるようにしなくては。優樹は二次会の会場を物色するためスマホに手を伸ばしながら、色よい返事をしかける。けれど言葉をつむぐ前に、横から発言権を奪われてしまった。
「ううん、いかない。ゆきさんは俺と帰る」
「ん!?」
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