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11月XX日、金曜19:57
場の会話が一段落した頃合いでシュッと手のひらを掲げる。
「そろそろラストオーダーの時間なんだけど、連絡先交換しなくて平気?」
優樹の発言をきっかけに、みないそいそとスマホを手に取る。ひとまず最低限の役割は果たした。この流れで各自お好きなようにやってくれればありがたい。
コードリーダーを駆使して次々に連絡先を交換していく彼らを前に、優樹自身のスマホはテーブルの上に置いたままだ。
幹事というのは合コンの一番の功労者であるはずなのに、なぜだかこうして対象外の扱いを受けてしまうことがある。
(いいんだ。男性陣ともろくに話せてないしね)
全員に話を振って、注文を取り、空いたグラスや皿を片付けやすいように入り口近くにまとめ、その合間に自分の食事を進め、さらには密かに場のメンバーから送られるメッセージをさばく。実に忙しい。そのせいで食べた気はしないし、新たに出会った相手の名前もおぼろげだ。
要領が悪い自分が悪い。そう結論づけて、手元のグラスを一口あおった。
(わ、水っぽい……)
時間を置きすぎてぼやけた味のするカクテルに苦笑する。と、その時置きっぱなしになっていたスマホが急に震えだした。慌てて手に取る。
(誰……って、ユウキくん!? なんで?)
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