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先野は警戒した。
が──。
実は……と話を切り出したその男は、
「私は某芸能事務所でマネージャをしている者なんですが、実は、某大物俳優の息子で、某所に住むアイドルとして売り出す前の歌手が、最近、どうやら女と付き合っているようなんです」
ヤクザではなかった。とはいえ、似たようなものかもしれなかった。一見華やかではあるが、その実、栄枯盛衰の激しい業界に集まる有象無象が、互いの腹のうちを読みあいながら牽制し、戦いに敗れれば情け容赦なく消え去る修羅の世界……というイメージが、先野の頭に思い浮かんだ。
「某なにがしってのが多いですけど、それでは調査になりませんわ」
澄まし顔でそう言ったのは、先野の横に座る三条愛美である。
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