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興信所「新・土井エージェント」の面談コーナー。日々、悩める者たちの相談を受けているパーテーションで区切られた一画……。先野と三条はそこに所属する探偵であった。今日も依頼者との対面で話を聞いていた。そして今回の依頼者であるその男は、ある人物の身元調査を依頼してきた、というわけだった。
「すみません、つい……この業界、敵が多いものですから」
テーブルをはさんだ向かい側に座る、マネージャだと名乗った三十代といった外見の依頼者は、細い眼鏡を外し、ハンカチでオールバックの額の汗をぬぐう。「敵」というのは、ライバル他社や週刊誌の芸能記者、芸能レポーターやフリーカメラマンといったところだろうか。調子がよいと見るや、足をつかんで引きずり下ろそうするから、油断も隙もないのであろう。
絶対に口外無用でお願いしますよ、と依頼者はしつこく何度も念を押した。
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